【更新】代表挨拶

新年あけましておめでとうございます。

旧年中はお世話になりありがとうございました。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、約2年ぶりに『代表挨拶』を更新しました。


---------------------------------------------------


ホームページを開いていただいたみなさんへ

― 声を聴きつなぐ会からのメッセージ ―


ホームページを開いていただいたみなさんの多くは、 わたし達のことに関心を持っても、どんな会なのか知らない。 そんな方も多いと思います。 そこで少し長いですが、わたし達声を聴きつなぐ会についてお話をさせていただいて、ご挨拶にかえたいと思います。よろしくお願いいたします。


〈性暴力の当事者と 性暴力防止の当事者〉

声を聴きつなぐ会は、学校での性暴力の被害者、その家族、教員などで構成された会です。 性暴力では加害者と被害者に焦点が当てられがちですが、性暴力の周囲には多くの人がいます。 その人達の多くは「気がつかなかった」と言います。 わたしも同じでした。 わたし達は当時の事実を見つめ直すことで、多くのことに気がつきました。 人と人との関係が支配と被支配になるとき、性暴力は起きること。 性暴力そのものに気づかなくても そこにあるたくさんの気づきや違和感があること。 そして支配-被支配の関係になる前に、そのことに気づいて関係を壊すことで性暴力は防ぐことができること。 防ぐのは加害者によって疲弊している被害者ではありません。 その周囲にいる人たちの協力が性暴力の防止につながります。 つまり性暴力はそこにいるわたし達みんなの問題です。 加害者と被害者としての当事者ではなくとも、すべての人が性暴力防止の当事者だと考え、性暴力防止の当事者を増やしていくことがわたし達の活動です。


〈三つの壁〉

わたし達が性暴力に向き合い、声を上げてから7年目になりました。 何かゴールがあって、そこへのルートがあったのではありません。 人とのつながりを支えられ、できることを一生懸命にしてきた7年間でした。 振り返ると、わたし達は壁に向き合ってきました。 A)加害者の壁 B)行政の壁 C)誹謗中傷と偏見の壁です。 これらの壁は、はじめは側に寄ることも許されない壁でした。 加害者の壁を崩すのには3年間かかり、加害教員は事実を認め、謝罪をしました。 行政の壁は理不尽な対応もありましたが、少しずつ性暴力の防止へと力をあわせてすすめる状況がうまれてきました。 望外なことに現在では三重県の性暴力の根絶をめざす条例(仮称)作りの懇話会に参加しています。 「性暴力の根絶」が行政の目的として取り上げられる社会がうまれ、その中で当事者としてできることをしていきたいと思います。

しかし、誹謗中傷と偏見の壁は、これからの課題として残っています。 これには理由があります。 一つは性暴力がすべての人たちの問題になっていないこと。 性暴力は運の悪い人や被害者にも責任のある出来事ではありません。 二つは起きたときの出来事には目が向くようにはなりましたが、性暴力の性質や被害者やその家族にとっての長くて広い影響、一生を変える問題だという捉え方がなされていないこと。 三つは性暴力を被害者の中に閉じ込めようとする捉え方、例えば「いたずらじゃないか。 忘れたらいい」などという言説が多くあること。 こうした理由が、被害者に対する誹謗中傷と偏見として働きます。 誹謗中傷と偏見は個々人の問題ですが、その取り組みは、学校や企業など様々な場面で性暴力の知識理解と被害者への想像力と取り組む勇気の必要が学ばれなければなりません。 わたし達はこれまで自分たちが講師になったり、この問題について専門的な取り組みをしている人たちを招いて交流会を開いたりしてきました。 時間がかかるように思えても、こうした取り組みが誹謗中傷と偏見をなくしていく近道だと思っています。


〈声を聴きつなぐ会のこれから〉

 ここまで述べてきたことでご理解いただけると思いますが、声を聴きつなぐ会はこの問題を敵と味方という二分割思考で考えることをしていません。 性暴力の防止はすべての人の課題です。 すべての人である以上、意見を異にする場合も多くあります。 これまでに出会った人にも、声を聴きつなぐ会を警戒する人も、性暴力に別の見方をしている人たちもいました。 しかし、すぐに意見が通らないからと背を向ければ、幅の広い理性的な判断ができなくなるし、感情的な対応ばかりになってしまいます。 そして、「敵」はどんどん増えていきます。 わたし達の願いは自分たちが正しいことを証明することではなく、性暴力を防止することです。 わたし達よりも効果のある防止の方法論を持っている人もいるでしょう。 何よりも性暴力の防止にはできるだけたくさんの人たちの協力が必要です。 それも、いつか防止ができたらいいではなく、できるだけ早く防止する必要があります。 性暴力についての知識と理解を広げていく取り組みには二分割思考ではできません。 しかし、もとより声を聴きつなぐ会は、小さな会です。 わたし達の取り組みの広がりは、けっして大きくはありません。 だからこそ行政とも力を合わせながら、それを広げていく必要があります。 行政は壁でもありますが、壁に終わるものでもなく、パートナーにもなりえます。 このことがわたし達の7年間の学びです。 


〈終わりに〉

性暴力の解決にかかる時間は、被害者を守るためにもできるだけ短いことが望ましいことはもちろんです。 わたし達にとっても7年間は、とても長い時間でした。 しかし、その中でたくさんの出来事があり、多くの人たちに出会ったことは無駄ではありませんでした。 今回も、こうしてみなさんに出会いました。 わたし達の願いは、これを読んでくださったみなさんが性暴力防止の当事者として自分ができることを見つけていただくこと。 そして、いつかわたし達が思いと考え、経験を交差させていくことです。 わたし達のつながりが拡がっていくことが必ず性暴力の防止につながっていく、そう固く信じています。 

2025年 1月 1日

  声を聴きつなぐ会 代表 大原康彦

声を聴きつなぐ会

【聴き合う、つながる、守り合う】 子どもが虐待・性暴力をはじめとする人権侵害から守られる、豊かであたたかい社会を作るために活動しています。 このため、子どもたちや保護者、地域の方の声を聴き、その課題を解決するための“つながり”を作り出す取り組みを行います。

0コメント

  • 1000 / 1000